不動産売却
「不動産売却時の税金は、いくらかかるの?」と不動産の売却をご検討している方は気になるところだと思います。 不動産の売却を考えているすべての人にとって、税金の知識は非常に重要です。場合によっては本来なら節税できたはずの大金を納税してしまったり、税金を支払うタイミングになってから資金不足に陥ったりする人が後を絶ちません。 そこで本記事では、不動産売却において非常に重要な「税金」について、詳しく解説します。
「必要な納税資金を知っておきたい」、「納税額を減らしたい」という方は、解説を最後までお読みいただければ、具体的にいつ・いくら支払えば良いのか、節税対策はどうすれば良いのかわかるようになります。 それでは解説していきましょう。
不動産を売却すると課税される税金は下記の5種類です。
税金の種類 | 説明 | 税率・税金額 |
---|---|---|
印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙税 | 400円〜60万円 ※売買価格により異なる |
譲渡所得税 | 不動産売時に発生した利益に対してかかる税金 | 譲渡所得の30%または15% |
住民税 | 不動産売時に発生した利益に対してかかる税金 | 譲渡所得の9%または5% |
復興特別所得税 | 東日本大震災の被災地復興財源を確保するため、一定の所得に対して課税される税金(令和19年まで上乗せされる) | 譲渡所得の0.63%または0.315% |
登録免許税 | 不動産の名義を変更する際に課される税金 | (相続登記)不動産の価額の0.4% (抵当権抹消)1件1,000円 |
それでは、ひとつずつ詳しく解説していきます。
1つめの税金は「印紙税」です。
こ印紙税とは、契約書・証書などの発行や取引に際して課せられる税金のことで、不動産売買の際に交わす「売買契約書」も印紙税の課税対象となります。
売買契約書の原本に収入印紙を貼り付ける方法で納税します。印紙税の税額は、売買契約書に記載された契約金額(不動産の売買代金)によって変わります。
目安の金額については、以下をご参考ください。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
印紙税は売主・買主で折半しますが、売買契約書は通常2通作成します。よって上記表の契約金額に応じた税額を負担すると考えておきましょう。
2つめの費用は「譲渡所得税」です。
譲渡所得税とは、不動産を売却した際に得られる利益(譲渡所得)に課される税金のことを指します。譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間により異なり、譲渡所得の30%または15%になります。
不動産の所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下 | 譲渡所得の30% |
5年超 | 譲渡所得の15% |
※所有期間は売却した年の1月1日時点での所有期間
譲渡所得は以下の計算式で求められます。
「譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」
計算した譲渡所得の金額に、所定の税率をかけた金額が、納税する譲渡所得税の税額になります。
3つ目は「住民税」です。
住民税とは市町村が課税する地方税の一つで、所得に応じて算出されます。不動産売却で得た利益(譲渡所得)に対しても、住民税が課税されます。住民税の税率は譲渡所得の9%または5%です。 また、譲渡所得税と同様に、不動産の所有期間によって税率が変わります。
不動産の所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下 | 譲渡所得の9% |
5年超 | 譲渡所得の5% |
※所有期間は売却した年の1月1日時点での所有期間
4つめの費用は「復興特別所得税」です。
相復興特別所得税は、2011年に発生した東日本大震災の被災地復興財源を確保するため、一定の所得に対して課税される税金で、令和19年まで上乗せされます。
復興特別所得税の税率は、譲渡所得の0.63%または0.315%で、不動産の所有期間によって税率が変わります。
不動産の所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下 | 譲渡所得の0.63% |
5年超 | 譲渡所得の0.315% |
※所有期間は売却した年の1月1日時点での所有期間
5つめの費用は「登録免許税」です。
登録免許税は、不動産の所有権移転登記をするために必要な税金で、所有権移転登記(土地や建物などを売買で不動産の所有者を登記簿に登録すること)に必要な書類を提出した際に課税されます。
登録免許税は、相続した不動産を売却する場合や、住宅ローンの返済が残っている(抵当権がついている)不動産を売却する場合に発生します。税率について以下の通りです。
相続した不動産を売却する場合には、まず「相続登記」が必要です。 相続登記とは、相続した不動産の所有権を相続人へ変更する手続きで、相続登記でかかる登録免許税の税額は、以下の通りです。
種別 | 内容 | 税率 |
---|---|---|
土地の所有権の登記 | 相続、法人の合併又は共有物の分割 | 不動産の価額の0.4% |
建物の登記 | 相続又は法人の合併による所有権の移転 | 不動産一件につき1,000円 |
ここまでご説明したので売却して税金がかかるケースとかからないケースの例を見てみましょう。あくまでも計算例ですが、ご参考にしてください。
このように譲渡所得に対して、それぞれの税率で金額を計算します。今回のケースでは合計142.7万円の税金が課せられます。
続いて、譲渡所得がマイナスになるケースを見てみましょう。
こちらのケースですと譲渡所得がマイナスになり、利益が出ていないため、税金はかかりません。
※売却経費となるものは印紙代、仲介手数料、その他必要と認められる経費を指します。
ここまでお読みいただき、「意外と税金がかかるな」と思った方もいるかもしれません。
できるだけ節税をするには、譲渡所得(利益)の金額からマイナスできる特別控除を最大限利用しましょう。
代表的なもので以下4つの控除があります。
1つ目は「マイホーム売却時の3000万円特別控除」です。
この控除は、要件を満たせば、売却で得た利益(譲渡所得)から最大3000万円の控除を受けられる制度です。
居住を目的とした物件(居住用財産)が対象となり、賃貸用マンション・アパート、更地などは含まれません。
特例を受けるためには詳しい適用要件は「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご確認ください。
どの程度節税になるかは、以下の計算式で確認できます。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
このように特別控除を利用することで、大幅な減税が可能となります。
2つ目は「空き家売却時の3,000万円特別控除」です。
相続した空き家を売却する場合も、一定の条件を満たすことができれば3000万円の特別控除が適用されます。
控除を受けるための主な要件
要件が多く複雑となっているため、詳しくは国税庁のホームページ「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」にてご確認ください。
3つ目は「相続した空き家を売却した時の取得費の特例」です。
これは相続税の申告期限から3年以内(相続してから3年10ヶ月以内)に不動産を売却すれば、
譲渡所得を計算する際の取得費に、売却した不動産に対する相続税額も加算できる特例となります。
上記の図のように、課税対象となる譲渡所得の額が減るため、節税効果が期待できます。
こちらの特例を利用する場合の要件については、国税庁のホームページ「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁」をご確認ください。
最後は、「土地の売却の特別控除」です。
これは土地を売却した場合に、様々な控除が受けられる可能性があります。
主な種類と控除額については以下となります。
種類 | 特別控除額 |
---|---|
(1)公共事業などのために土地を売却したとき | 5,000万円 |
(2)マイホームを売却したとき | 3,000万円 |
(3)特定土地区画整理事業などのために土地を売却したとき | 2,000万円 |
(4)特定住宅地造成事業などのために土地を売却したとき | 1,500万円 |
(5)平成21年および22年に取得した国内の土地を売却したとき | 1,000万円 |
(6)農地の保有化などのために土地を売却したとき | 800万円 |
(7)低未利用土地等を売却したとき | 100万円 |
各控除には様々な要件があるため、土地を売却する前に使える控除がないか調べ、要件を満たすよう考慮して売却すると良いでしょう。
いかがだったでしょうか?
不動産を売却する際、意外と税金がかかるというケースが多いと思ったかもしれません。
不動産売却時の税金で損しないための注意点としては、事前に控除・特例について調べておくこと、確定申告を忘れずに行うことが大切です。税金の知識をしっかり身に付けて、資金を上手にやり繰りしながら、賢く不動産売却を進めていきましょう。